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  • 執筆者の写真中山 孝一

小桜十夜 <出格子と雨戸>

 外から小桜の二階を見上げると出格子というのがある。出窓ではなく格子が突き出ている。昭和30年のどさくさの時代の建物だからかなり荒くつくられている。ちなみにお隣の「さかえ」は小桜よりだいぶ後に造られたので丁寧な格子になっている。ところで、小桜とさかえの2軒が並んでいるところから竜宮通りを眺めるといつもある雰囲気を連想する。アーチ看板には「竜宮通り社交街」とある。そう、どことなく遊郭を想像しないか、初めてこの場所を見るひとが間違いなくそう思った、という人は結構多い。


 昔のことだが、ある日、二階の準備をするため窓を開けていると、下の通りをガイドが数十人の観光客を引き連れて小桜の前で立ち止まった。そしてなにやら説明をはじめた。耳を立てて聞いてみた。そのガイド、自信たっぷりに大声で言った。「この辺りは昔から遊郭として栄えたところでありまーす!」と、それを聞いた観光客たちは僕のいる二階を見上げながら、「ふん、ふん確かにその風情があるねー」と納得しているではないか、もう、わじわじーをこえて苦笑しかない、こうして沖縄に対するイメージが誤解、曲解、歪曲から偏見へと発展していくのだなーとしみじみと悟った。

 

 さて、この出格子があると雨戸もある。この雨戸を閉める際鍵をかけるのだが、これが沖縄独特のもので、丸い器具に楕円の輪っかをはめ、そこに五寸釘を通す。これだけだが見たことがない人には知恵の輪に見えるようだ。アルバイトの青年に二階の鍵を閉めさせたらなかなか下りてこないので上がってみると、頭を抱えながら五寸釘を握り締めていた。1980年代あたりから世はアルミサッシの時代になった。小桜の客にもサッシ屋さんがいてしつこいお勧めがあった。が、「すみません、先代から店内どこもいじらないようにとの言い伝えがありましたので」と丁重にお断りした。近代的な小桜への姿は回避できた。

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