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  • 執筆者の写真中山 孝一

親子3代の入院

親子3代の入院

  2022年8月29日はPCR検査受けた後の午後からの入院だったので、その前に昼食を取ろうと、美容室近くの食堂へ次男の祐作と行った。食べながら二つの出来事を思い出した。一つ目は今から41年前になる、父重則が心筋梗塞で沖縄県立那覇病院に運ばれた時だ、運んだのは救急車ではなく、タクシーだった。その日は結婚式があり二次会でもたっぷり飲んで家に帰ってしばらくしてだった、父が急に胸を掻きむしるような仕草をして苦しみ出した。どうした、といっても声がでない、とにかく救急病院に行こうと国際通りに出てタクシーを止めた。(後にこれが看護師から大目玉を食うことに)

 病院は座るところもないほど混雑していた。父は苦しさがおさまらず、ずっと掻きむしりつづける。そばにいる僕はなすすべもなく背中をさすっていた、その様子に気づいたのは、見るからに婦長らしき看護師、すぐさま飛んできて、父を引っ張っていき、居並ぶ急患を差し置き医師に指示をだし即座に治療をはじめさせた、あらゆるところへ針を刺し水分を抜いていた。あまりにも急な処置で麻酔も効いてないのだろう、痛さで顔をゆがめていた。

 その後、落ち着いたので他の入院先が見つかるまでここで仮入院することになった。そして、婦長らしき看護師から説明を受けることになった。あの胸を掻きむしる症状は明らかに心筋梗塞の発作が起きた一分一秒を争う危険な状態だと、それを、救急車を呼ばずタクシーで来るとは!とのおしかりを受けたのだ、が初めてのことなのでどうしたらいいのか、確かに急を要する患者だったら救急車の方を優先する。あのまま悠長に順番を待っていたら…あの婦長さんがこちらを見てくれなかったら…人の運命はわからない、その後父は9年間生き長えられた。

 二つ目は、父重則が亡くなる2年前に生まれた次男祐作である。ようやく立ちはじめた1歳を過ぎた頃沖縄では麻疹が蔓延していた。麻疹にかかってるとは知らず単なる風邪だと思い、長い間近くの小児科に通っていた、ところが良くなるどころか高熱のまま、息も絶え絶えになっていく、小児科の医師もお手上げだと紹介状を書いてくれた。それが、沖縄県立那覇病院である。

 

 しかし、ここでも41年前を彷彿とさせる出来事が起こるのである。その日ぐったりとしている祐作を抱いて小児科の診察室へ行った。すると、祐作を一目見て担当の医師が慌てだした、すぐに入院して処置しないとあぶない、と病棟にいる他の子を退院させてベッドを確保、そしてICUのテントの中で様子を見る事となった。事の重大さをはじめて知った私ら夫婦二人はオロオロするばかりでテントの中の我が子の成り行きを見守るしかなかった。

その後病状は見る見るよくなるが、麻疹が良くなったと思えば、喘息の症状がでて、それが良くなれば水疱瘡と、部屋を転々として最後は県知事が入るVIPルームで過ごして病院を後にした。

 この時も、あの医師に出会っていなければと思うと…である。あれから、32年、お父さんになった祐作は、やがて4人目の子供を授かろうとしている超元気者になった。

 さて、私の父と我が子の話はどれも舞台が「元沖縄県立那覇病院」である。那覇市与儀の那覇警察署の隣にあった。元というのは今はすでになく、同じ地に数年前建てられたのが現在の「赤十字病院」である。奇しくも二人と同じ地に私は入院することとなった。妙な縁を感じる。

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