top of page
検索
  • 執筆者の写真中山 孝一

ぼくと泡盛 1

更新日:2020年7月6日


 平成5~6年頃だから、今から27年ほど前、小桜が一番がしぼんでいる頃である。どうすればお客さんが来るのだろうかと日夜頭を抱え路頭を迷っていた。そして、ある時思いついた。「小桜会」と称して毎月テーマを設けての「飲み放題、食べ放題、言いたい放題の会」をとやろうと。顧客名簿や名刺からハガキで案内すれば多少は来てくれるだろうと、少しの希望を抱いた。

 毎月のテーマには悩んだ、「沖縄の魚はうまいか、まずいか!」「なんでも燻製にしまーす!」「鍋料理せいぞろいだ!」「沖縄料理と琉球料理のちがいは?」、なぜか「奄美の島唄で一杯!」なんていうのもあった。その「小桜会」の第4回目のテーマが「琉球の泡盛をぜーんぶ飲み干そう!」だった。


 泡盛に関しては、その数年前から興味があったので、大体は把握していたが、沖縄中の泡盛を集めるというのがこれほど難しいとは思わなかった。

 全県の泡盛をまず46件に絞った。八重山地方が10件の蔵元、宮古が7件、久米島2件、あと伊平屋、伊是名がそれぞれ1件、で本島が残りの25件の蔵元があることになる。さーこれをどこに行けば手取り早く手に入るか考えた。普通の酒店では主たるものしか在庫を抱えない、那覇では久米島の久米仙と菊の露があれば、ほぼ事足りていた。


 那覇の泊港の近くに喜屋武商店という大きな酒店がある、ここは復帰前のアメリカ統治下時代、洋酒全盛の頃に、全県の泡盛蔵元と契約を交わした初めての泡盛卸業者であることがとわかった。早速ここを訪ねた。成る程、確かにほとんどの泡盛が揃っている。あの当時はウチナーンチュであれども泡盛を見向きもしなかった。そこに目をつけた店主の先見性に感心した記憶がある。


 沖縄県酒造協同組合に登録の蔵元は48件、そのうちの2件、組合のブレンド商品(紺碧、海の邦等)と甲乙混和酒のメーカーは外し、純粋な泡盛メーカー46件に絞った。

 46件のうち、幻といわれる入手困難な酒があったが、製造もされ販売もされているので決して幻ではない、こういう形容詞で消費者を惑わし高値をつけることに、酒を愛する者としては憤りを感じる。この酒は今回のイベントのみにして、以後泡盛として認めないことにした。(銘柄名はのちに明かされる)


 喜屋武商店で全て揃うと思ったが、難題はこれからだった。

名護にある津嘉山酒造の代表銘柄は「国華」、那覇小禄にある宮里酒造の代表銘柄は「春雨」という。この2件が全種揃えようと意気込む行く手を阻んだ

 まず、「国華」は物自体がない状態ということがわかった。休業中だった。「春雨」も常時作っていないのでどこにいっても見当たらず、蔵元に電話しても「何にもないよ!」とけんもほろろ・・・

 <この2件、津嘉山酒造所と宮里酒造所については以降に詳しく述べる予定です。>


 さて、この企画どうなったか、結果なんとか間に合って、沖縄が誇る「琉球泡盛」全蔵元46種が揃ったのである。時は平成6年2月25日、テーマは「泡盛と琉球料理」、その時の案内文にこうある。

 「今回は、沖縄が世界に誇る泡盛(県内全蔵元46種類)と琉球料理の数々を楽しんでいただきます。特に目玉は幻といわれている、波照間の”泡波”や名護の”国華”、更に幻中の幻の”□□”は来てからのお楽しみ!是非ご来店下さいませ。」

無事イベントは成功した。これ以降果たして泡盛が世界に誇れる酒となったのか、この27年を振り返り検証してみたいと思います。


閲覧数:93回1件のコメント

最新記事

すべて表示

昼呑みのすゝめ ①

昔の話、出先の食堂で見た光景。ニッカポッカを着た中年の大男と小さい若い青年が入ってきた。店員に「あれ!」と言っただけで出てきたのは並々と注がれたコップ酒、それを二人とも一気に飲み干したあと食事をした。実に鮮やかな呑みっぷりでかっこよかった。 高所の作業の緊張を和らげるために飲んだのだろうか、酒の効用というものか・・・世間一般でいわれる、真っ昼間から酒飲んでこいつらは、という蔑みが消えて憧れを感じた

小桜十夜 <ジュークボックス>

今の世はいろんな分野で最新のテクノロジーを競い合っているが、昔のアナログ時代でも驚くべきテクノロジーがあった。それは、ジュークボックスという自動音楽再生装置。今は携帯電話からタダで音楽が流れてくるが、その前はCDやMDという媒体を使い、もっと前はレコードやカセットテープなどで音楽を聞いていた。そのレコードが何十枚と入ったボックスにコインを入れ選曲すると機械が自動的にレコードを選び曲が流れる。そんな

Aボール物語 ③

酒飲みは一杯のグラスに思いを詰め込むロマンチストばかり、何処どこの店での一杯に思いをはせる。かくいう僕もこれまで、赤坂見附のバー木家下の開高マテイーニ、新宿伊勢丹サロン・ド・シマジのマッカラン、銀座7丁目ライオンのサッポロ生、老舗居酒屋では大阪の明治屋、名古屋の大甚、京都の赤垣屋の銘柄不明の銅の燗付器から注ぐ燗酒、バーザンボアのハイボールは大阪、神戸、銀座、京都の各店はさすがに変わらぬ味。古くはラ

bottom of page