top of page
検索
  • 執筆者の写真中山 孝一

上杉鷹山


 うえすぎようざんと読む、この人物のことを知っている日本人は果たしてどれだけいるだろうか。僕が最初に目にしたのは、昔、ある新聞のコラムにのった、「上杉鷹山の経営学」という本の紹介だった。興味を持ったので、すぐに読み始めた。その初っ端に書かれていたのが、アメリカ大統領のジョン・F・ケネディに日本人記者がインタビューで、「あなたが一番尊敬する日本人は誰ですか?」の問いに、ケネディは即座に、「上杉鷹山」と答えたということからの始まりだった。

 それから読み進めて行くと実に面白いことがわかった。その日本人記者は、上杉鷹山のことを知らなかったようだ、なぜに日本人が知らないのに、ケネディが知っていたのか、それは、明治時代の代表的な作家に、内村鑑三がいる。その著「代表的日本人」をケネディは読んでいたのである。キリスト教信者である内村鑑三は、日本を代表する歴史上の人物5人を選び、それを各国の言語で世界中に紹介したのである。当初英語で書かれていたものを、和訳にされたものが、いま手元にある「代表的日本人」である。

 5人の人物とは、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人、である。実は、この本、昔に読み終わっていたものであることがわかった。それをすっかり忘れていて、「上杉鷹山の経営学」を読み、再度の購入になった。いま改めて読むと、忘れていた感動が蘇ってきた。

 なるほど、ケネディが尊敬する日本人としたのが頷ける。それは同じ政治家としての精神を学んだのだろう、と

 上杉鷹山は17歳の若さで上杉家の養子に入り、衰退の一途の山形の米沢藩の藩主になる。当初100万石の大藩が30、15万と下がり、その国の民衆の様子は見るも無残な貧困にあえいでいた。それでも藩のお偉方は大藩の慣習が抜けなく、贅沢三昧で改革のノロシもあげないでいた。

 それを見かねた鷹山は、思い切った改革案を次々と断行していく、17歳の若さゆえ、幾多の困難が待ち受ける。しかし、最後まで貫いた精神が、民への愛であった。その深き愛が徐々に民衆にも、藩士の下から上までにも理解が及び改革は進んでいく。

 有名な話がある、初めて藩の様子を見て、これからどうすればいいのか考えている時、偶然火鉢の中の火が消えかかった。家人が、取り替えましょう、というと、それを制し、消え掛かった火種をじっくりと見た。よしツ!これだ、と気がついた。その火種は消えることなく、吹き付けるとまた燃え出だしたのだ。これと同じく、一人一人への地道な意識改革が万波に及んだとき、改革は成功する。と、上杉鷹山はここで絶対的な信念を持つ。確信する。そしてここから忍耐強い改革が行われ、見事に藩は変貌する。

 いま、なぜ上杉鷹山か、と問えば、いまだから、と強く思う。それは今の日本、危機を乗り切るリーダーが見えないからである。民意をも無視する政治、忖度という言葉が飛び交う政治、果ては日本語があやふやな政治家、ワイドショーで騒がられる政治家たち、と

 今だからこそ、ケネディが尊敬した日本人-上杉鷹山-を深く知り、その精神を、この政治家たちに、その爪を煎じて飲ましてあげたい気持ちでいっぱいである。

                            2019.3.15 小桜64年目の日


閲覧数:98回0件のコメント

最新記事

すべて表示

昼呑みのすゝめ ①

昔の話、出先の食堂で見た光景。ニッカポッカを着た中年の大男と小さい若い青年が入ってきた。店員に「あれ!」と言っただけで出てきたのは並々と注がれたコップ酒、それを二人とも一気に飲み干したあと食事をした。実に鮮やかな呑みっぷりでかっこよかった。 高所の作業の緊張を和らげるために飲んだのだろうか、酒の効用というものか・・・世間一般でいわれる、真っ昼間から酒飲んでこいつらは、という蔑みが消えて憧れを感じた

小桜十夜 <ジュークボックス>

今の世はいろんな分野で最新のテクノロジーを競い合っているが、昔のアナログ時代でも驚くべきテクノロジーがあった。それは、ジュークボックスという自動音楽再生装置。今は携帯電話からタダで音楽が流れてくるが、その前はCDやMDという媒体を使い、もっと前はレコードやカセットテープなどで音楽を聞いていた。そのレコードが何十枚と入ったボックスにコインを入れ選曲すると機械が自動的にレコードを選び曲が流れる。そんな

Aボール物語 ③

酒飲みは一杯のグラスに思いを詰め込むロマンチストばかり、何処どこの店での一杯に思いをはせる。かくいう僕もこれまで、赤坂見附のバー木家下の開高マテイーニ、新宿伊勢丹サロン・ド・シマジのマッカラン、銀座7丁目ライオンのサッポロ生、老舗居酒屋では大阪の明治屋、名古屋の大甚、京都の赤垣屋の銘柄不明の銅の燗付器から注ぐ燗酒、バーザンボアのハイボールは大阪、神戸、銀座、京都の各店はさすがに変わらぬ味。古くはラ

bottom of page