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  • 中山 孝一

僕とコーヒー


 朝は“ウイーン”という、電動コーヒーミルの音で目が覚める。

毎朝妻がコーヒーを入れてくれる。二人で飲みながらNHK朝の連ドラを見るのが日課となった。だいたい2~3杯は飲む。

 コーヒーとの付き合いは長い、中学生のとき勉強机の上に盆をおいて、そこにマキシムのインスタントと魔法瓶にいつもお湯を準備、ちょっとした大人の気分を味わっていた。だからコーヒーばかり飲んで勉強はちっともやらなかった。その後、大学でのひとり暮らしのときもインスタントが続いたが、4年の卒業研究で一緒になった友人が大のコーヒー好きで、毎朝、豆を電動ミルでひいた新鮮なおいしいコーヒーを研究仲間6人に振舞った。研究室はいつもコーヒーの香りが充満していた。

 いつの間にか、 研究テーマ「酸化チタン誘電体と半導体の研究」は「美味しいコーヒーを作るための最適なコーヒー豆の粉砕時間は」というものに変わっていた。

 その、豆を挽いたコーヒーのうまさに入ると、もうインスタントは飲めない。早速通販でサイホン式のコーヒーセットを注文した。着いた初日、近くの友人、坂本くんと真喜屋くんを呼び、お披露目会をやった。皆で酒を一杯やった後、そろそろコーヒータイムにしょうかと、セットに入っていた手動のミルで豆をひくと小さい部屋に何ともいえない香りが部屋いっぱいに、皆期待した。取説を見ながらサイホンを組み立てた。そこまではよかった、そこで気がついた。熱源のアルコールランプのアルコールがないのに、3人はろうそくの火をあてられたサイホンを囲み、勢いよく沸騰してコーヒーが抽出される様子を想像することだけをその後数時間続けた・・・

 その後社会人になった。学生時代と比べ部屋にいる時間は少ない。手間ひまかかるサイホンは押入れの奥に納まった。その代わりに来たのが、ドリップ。一人用の陶器のドリッパーと専用のケトルを購入、朝の弱い僕の毎日は、起きるとすぐさまコンロに火をいれる。沸騰するまでの間、急いで出勤の準備をする。そして一杯分のコーヒー豆をミルにいれ引くと、電動ではないせいか、香りがひときわ立つ感じがする。しばらくこの香りを楽しんだ後は気を静めて、ケトルをつかみ、蒸らしからはいり、基本の「の」の字を意識してゆっくり回し入れる。よしっ!上出来と、一気に飲む。この一杯で目が覚め、俄然やる気がでる。

朝のひと仕事を終えた昼食後のコーヒーもこれ楽しみ。会社の近くに「珈琲館」という喫茶店があった。近隣の多くのベテラン社員の中で、新入社員の僕は勇気を出して、毎日のように一人で通った。それからはマスターと親しくなり珈琲についていろいろ教えてもらった。

 時は立ち、現在冒頭のような毎日で珈琲を楽しんでいる。手元に「作家の珈琲」という本がある。小桜のお客さん、金丸さんが編集されたものだと一冊いただいた。作家たちがお気に入りの珈琲を飲むシーンに格調高い文が添えられている。作家たちが飲む珈琲はどれも一段と高い味わいがあるように感じられる。


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