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  • 中山 孝一

食道がん パート2

 本屋へ行くと、50代、60代、70代とそれぞれの年齢の充実した生き方を書いたハウツーものがたくさん並んでいる。我が家の本棚にもそれぞれの代のが少なくとも一冊づつある。これまで、どれを読んでも最後の方では自分には関係ないな、と読むために時間を割いたことを後悔することがしばしばあった。しかし、今回思いもやらぬ病気を抱えたことで他人事ではなく、私ごととして読み返してみた。いつまでも若いと思う、いや思いたいのは人の常で、それが大きな失敗を招く

 2ヶ月程前になる。孫と公園の遊具で遊んでいた時、カッコつけてちょとした段差を飛び降りると尻餅をついた。何でもない段差だと思い込んでいたのだ、ところが転んだその瞬間、体の中を激しい衝撃が走り、やっと起き上がるともう腰がやばい状態になっていた。それから2ヶ月間苦しんだ。

 若いとき成し得たものがいつの間にかできなくなったとわかった時は妙に悲しくなるものだが、それは着実に年をとっているということの自覚がないだけ、ここで、「いつまでも若くはないんだから、」と周りから言われ続けたが、その都度反発していたことを思い出した。

 その腰がようやく治りかけた頃に、やってきたのが、この「食道がん」の疑いであった。

この一ヶ月間、喉への内視鏡2回、エコー2回、血液検査4回、CTスキャン、胃カメラ、PET検査、大腸カメラ等の検査が続き、その結果、あきらかに「食道がん」とわかった。身内を呼んでの医師の説明があったが、何を言っているのかさっぱりわからなかった。外科の医者はどうも論理的に説明するのが下手なようだ、こちらはとにかく具体的な治療法と日程を聞きたかったのだが・・・

 とりあえず先に、「抗がん剤投与」を始めようということになった。

 いつもなら「食道がん」や「抗がん剤治療」等について入念に調べるタチだが、今回は頭の中を無にした。決して怖いわけではなく、これから何が起こるかわからない妙なワクワク感があるのだ、例えば「抗がん剤」での副作用はかなり強いという、池江璃花子の髪の抜け方や痩せ方を連想したり、映画「最高の人生の見つけ方」でのジャック・ニコルソンのトイレで便器を抱いての嘔吐を思い出したりと、それらがどの程度なのかと、これまでにない経験ができることへのドキドキ感というのか、かなり呑気である。しかし、医師が言うには最近ではそこまでの副作用は起こらないというが・・・

 さて、その「抗がん剤治療」は明日8月28日入院後にはじまる予定だ、3週間の3クールというが、これもどういう形でやるのか皆目検討がつかない、頭にあるのは免疫力が下がるのでコロナには十分に注意という、そうすると部屋は大部屋より個室が期待できる、ということはホテルに滞在するのと同じではないかと、またまた悠長な気分になり、退屈しないようにとの準備を始める。まず本を数冊仕入れた。iPadでプライム動画を見れるようにした。エアポッド、スマホへの充電も怠らないようにした。これで快適な入院生活ができる。まるで修学旅行へ行く気分だ

 友人からこんなメッセージが来た。

「入院はダイエットにいいかも、貴殿が入院中、我輩は頑張って、まーさむん(ごちそう)をうさがり(食べて)、仲間たちとユンタク(喋り、楽しむ)しながら、うまい酒を楽しんでおく、退院を待ちわびたい」

と、こう返した。

「マッチョーケヨー(待っとけよー)スマートになって、ケートウクンドー(帰ってくるよー)」

 


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