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執筆者の写真中山 孝一

牧志界隈を歩く その九

更新日:2020年5月20日

 牧志1丁目は見所満載のはずだ、と思って、早朝張り切って、誰もいないモノレール美栄橋駅付近をいく。ひっそりと建つ”新修美栄橋碑”、その横の文化財の案内板を確認した。この辺りに文化財が集中しているらしい。まず「七つ墓」(幽霊ものだが美談の物語)、すぐ近くにあるはずだが見えない、案の定隠れていた。それとも隠したのか、ジュンク堂横から入るとマンションの裏に鬱蒼とした小さな森があるが、その中はもう、全く手入れされてなく、木々に覆われていて墓の形跡は全く見えない。マンションに覆われた文化財になった。


 次に、中国から瓦技術を伝えた”渡嘉敷三良(とかしきさんらー)と朝鮮から陶芸を伝えた”張献功”の墓を探したが、どちらも見当たらない、諦めて一旦帰宅した。

 家でもう一度ネットで確認した。確かにその辺りには行っている。昼過ぎまた探しに出た。すると今朝素通りしたところに、小さな墓碑がある。それが渡嘉敷さんの墓だった。見過ごすはずだ、浮き出た琉球石灰岩をくり抜いただけのものだった。(緑ヶ丘公園の中の小高い丘の麓にある)一方、張さんの墓は出入り禁止の森の中にあるそうだ。あの案内板は立派だったが・・・


 前回の牧志公園、希望が丘公園、そして緑ヶ丘公園は牧志の三大公園といっていいが、公園にしてはあまり人の姿を見ることがない。子供や家族連れの姿は見えないが、昼から酒を飲むおっさん連中はよく見かける。ありがたくない人たちが公園の常連になっている。不健全な公園そのものだ。公園をじっくり見回すと、そこに人が集まり、憩えるという前提の公園造りではないような気がする。座れるベンチがないし、安心して寝転べる芝生もないし、遊具もない。三カ所とも拝所、墓地だったところに作ってあるのはわかるが、公園という名にしてはお粗末というしかない、これまで住民の声がなかったのが不思議だ。

 と厳しいことを言いましたが、これは小さい子供をもつ数組の母親達からの声なので間違いはないと思う。この際 「牧志の公園をもっと健全に!」運動でもやろうか


 一丁目の範囲はわかりやすい。美栄橋駅から久茂地川沿いを行くと(美栄橋駅は沖映通りの端)角に小さな喫茶店に当たる。そこを左に入ると一銀通りになる。その一銀通りをまっすぐ行くと国際通りに出る。左に行くとまた沖映通りに出る。これが一丁目の範囲。

 牧志内で国際通りと58号線をつなぐ幹線道路は「沖映通り」と「一銀通り」の二つだけ、最近この通り名の出所を知らない人が多いので、ここでひとくさり述べてみる。(今の時代ネットで調べればなんでもわかるが・・・)

「沖映通り」は、沖映本館という主に沖縄芝居を行う劇場が、今のJR系のホテルの建つ地にあった。そこから沖映通りと名付けられた。この沖映本館の創業者が宮城嗣吉(みやぎしきち)という、沖縄史上最強の空手家と云われた怪物である。この人物伝が「スヤーサブロー 宮城嗣吉物語」という本に詳しく書かれている。この本を書かれた船越義彰先生から聞いた話がとんでもなく痛快で、面白かった。スヤーサブローは2001年に亡くなった現代人だが、歴史上の人物として後世に受け継がれてもいい人物だと思っている。

「一銀通り」は、角にある「沖縄海邦銀行」の前身が「第一相互銀行」といった。それを略して「一銀」。少し前まで「一銀堂」という土産品店があったり、「一銀駐車場」があったりした。「一銀スーパー」は今「いちぎん食堂」になっている。これからも伸びゆく一丁目を注視したい。



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