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執筆者の写真中山 孝一

小桜十夜 <ジュークボックス>

更新日:4月12日

 今の世はいろんな分野で最新のテクノロジーを競い合っているが、昔のアナログ時代でも驚くべきテクノロジーがあった。それは、ジュークボックスという自動音楽再生装置。今は携帯電話からタダで音楽が流れてくるが、その前はCDやMDという媒体を使い、もっと前はレコードやカセットテープなどで音楽を聞いていた。そのレコードが何十枚と入ったボックスにコインを入れ選曲すると機械が自動的にレコードを選び曲が流れる。そんな優れものだった。当時は喫茶店やスナック、ボウリング場などの娯楽施設にはほぼ間違いなくあった。その後時代はカラオケブームが起こり、有線放送が瞬く間に全島を網羅し、ジュークボックスはいつのまにか消え去った。そんなジュークボックスが小桜にもあったのだ。階下のスペースに鎮座して長い間活躍していた。が、ビールサーバーにその場を奪われた。今更ながら手放したことを悔やんでいる。

  

 52年前のある日の小桜でのこと、Aサイン店舗ではない小桜に珍しく若い米兵が一人でやってきた。歳の頃は僕と同じ二十歳前後、小太りであどけなさが残る赤ら顔の少年兵だった。1972 年頃だからベトナムから米兵が撤退する一年前になる。明日にでもベトナム行きかもしれない、とビールをちびりちびり飲んでいた。悲しそうな顔でジュークボックスに何回も25セントを入れて選曲していたのはビートルズの「ヘルプ!だった。隣の僕は黙って一緒に聞くしかなかった。生きていれば何処かで71歳を迎えているはずだが・・・

 

 今や絶滅危惧種といわれるジュークボックスだが、その貴重なものが未だ現役で動いているところが小桜の近くにある。グランドオリオン通りの中ごろにある「ゆーばんまんじゃ」という小さな居酒屋、狭い空間に二台ものジュークボックスがあり、一台は日本歌謡、もう一台は洋曲専用とに分けてある。45回転のレコードから流れる昭和のメロデイーはえもいわれぬ郷愁が漂う、拝聴の価値あり

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