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  • 執筆者の写真中山 孝一

ぼくの仕事歴

 完全に職を離れて4年になろうとしている。元来一人遊びが好きなので暇とか退屈とかは無縁なのであっという間に4年が過ぎた。その性分が今回の長期入院に役立ったように思っていた。4メートル四方の空間の中でも生活はほとんどベッドの上で24時間を過ごす、睡眠が8時間とし、食事に一食1時間当て3食で3時間、合わせて11時間としても残りが13時間もある。この24時間をベッドの上で過ごすとなるとかなりの精神的苦痛を強いられる。そこで十分な準備をして入院に臨みいかに有意義な病院生活が送られるかといろいろ工夫した。

 

 ところが、いかに本やiPadやパソコンを持ち込んでもそれだけを集中してやり続けることはできない、ぼーっとする時間が生まれる。そんな時は昔の良き思い出や苦い記憶が浮かんでは消え浮かんでは消えする。いい意味での放心の時間、そんなある時こんなことを思いついた。

これまでどんな仕事をしてここまで生きてきたんだろうと、自分の職歴をふりかえった。大学を卒業して4年間企業に勤め、その後は小桜なので職歴はこの二つと思いきや、思い出されたのがアルバイトの数々、今では跡形もない昭和の仕事の数々が鮮明に蘇った。

 人生で最初のアルバイトは高校2年の夏休みにやったパチンコ屋だった。当時のパチンコ屋は立って玉を一個づつ打ち込むタイプで、台の裏にはお姉さんがいて台に玉の補給をする。店内は軍艦マーチが最大のボリュームで一日中流れ、客はパンチ頭か夜のお姉ちゃんか軍用地で莫大な不労所得を得たおじーやおばーらでひしめいていた。沖縄では競馬や競輪はなくパチンコだけが合法的に許されたギャンブルだった。僕の仕事はお姉さんらに玉を運ぶのと玉の洗浄(専用の洗濯機があった)と1日中フル回転だった。当時は小さなパチンコ店が至る所にあった、そこは田舎から出てきた若い女子のいい働き口だった。その時もらった給与が10$。高校生にしちゃ破格だった。真新しい1$を一枚一枚丁寧に数え直し、人生初の自分の手で得た報酬に酔いしれた。その時の1$札の感触が今でも残る。

 その後大手のチェーンパチンコ店は新しい人手のいらない台になり、かつての古き良き街の小さなパチンコ店は姿を消していった。

 こんなアルバイトもした。京都の嵐山は今ではテレビにもよく映る観光地だが当時は有名な渡月橋だけで周りは閑散として何もなかった。そこに一大観光施設の開発が行われ、そこで配管業のアルバイトをした。その初日にいきなりツルハシとスコップを持たされ、ここからあっちまで深さ1メートル掘れと言われた。ここからあっちまでは見たとこ30メートルはある。これは1週間かかるなーと悠長に構えて掘ってるとその30分後に指示した作業員が来て一喝、「何やっとんじゃ!、これじゃ日が暮れちまうだろー!貸せ!」といってスコップを取り上げ掘り出した。その鮮やかな動きにしばらく見惚れてしまった。無駄な動きが寸分もない、僕がポカーンとしている間に作業は終了していた。いまではショベルカーであっという間だろうが

 その他のアルバイトは機械工員、家庭教師、空調設備屋、出張パーテイー屋、環境調査員、警備員、電話帳配送、防水加工、健康マット販売、パイナップル屋、時計販売、添乗員等全部で14種にのぼる。どれも人生の学び舎だった。


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