中山 孝一

3月2日2 分

クルーズ船のその後

 人類の巨大建造物へのあこがれは地上から海上へわたったのか、クルーズ船べリッシマを目の前にしてそう感じる。きらびやかなエレベーターホールからの船室へはどこのホテルかと思わせ、船内を散歩してみると、高級店が並ぶ90mに及ぶプロムナードにはいくつものレストランやバーが立ち並び、まるで東京のおしゃれな一角がそのまま移ったような空間をみる。外へ出ると大小のプールやジャグジーと巨大なウオータースライダーも、さらに体育館やトレーニングジムも完備、そして大人にはカジノルーム、子供にはキッズルーム、シアターではミュージカルからマジック等のパフオーマンスが日替わり、と、レジャーとエンターテイメント性は半端ない

 食事は24時間食べ放題、日本料理、台湾料理、洋食等がそろい、時間を気にせず食べられ、食後のプールサイドでは常にエアロビクスが行われる。夜はどこかしこででダンスパーテイーが開かれていて、まるで大人と子供の楽園がパッケージ化された巨大なお船という感じだ。決して乗客を退屈させないような仕組みがつくられている。ところが、4日目あたりになるとさすがに当初の驚きが冷めはじめ、日常が戻ってきた。参加型ではない傍観型の僕にとっては・・・

 そこで退屈しのぎに持参した本を読むことにした。これじゃいつもと同じじゃんと言うことなかれ、孫たちがはしゃぐプールサイドのデッキチエアーで横たわり、大海原を目前にして読む「トムソーヤの冒険」はそのまま本の世界に入り込むような素敵な時間だったのだ。

 ところで台湾からの帰途の航路ではこの巨大な船にしてはかなりの揺れを感じたものだが、ひょっとしてそれは昼夜問わずはしゃぎたてる数千名の乗客たちのせいだったのかも・・・

 

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