中山 孝一

2019年1月25日3 分

二冊の本との巡り会い

 先日から、改めて、大浜 聡さんの「国際通り物語」を読んでいる。氏の取材力には読むほどに驚かされる。誰と誰がいつ、どの時間で、どういう会話があったのか、そしてどうなったのか、まではいい、普通はそこで終わる。しかし、それが本当であったのか、当時の文献、資料をとことん検証していく、その徹底した取材精神には恐れ入る。

 もう一人似たようなかたがいる。共同通信の論説委員で、現在二度目の宮崎支局長をしている、上野敏彦さんだ。上野さんの取材力もすごい、少しの話でも、すぐさま図書館に向かい検証する。この二人に共通点がある。フエイスブックでの書き込みが尋常ではない、一日に何度となく書かれ、写真もふんだんに載せられる。そこに真のジャーナリスト精神がみえる気がする。

 「国際通り物語」の中で引用された本で気になるものが二冊あった。一冊目は船越義彰氏の「なはわらべ行状記」、二冊目は牧港篤三氏の「幻想の街・那覇」である。以前からどうしても読みたかったが、両方とも廃版になっていたので、諦めかけていた。

 先日、たまたまジュンク堂へ寄ると、ロビーで、新春古書展という企画が開かれいた。もしかすると、と、この二冊を探してみた。沖縄関係の書が並ぶ棚を、注意深く目を皿にして探した。 程なく、「なはわらべ・・・」は見つけた。次に「幻想・・」、これは見当たらないので、古書店の主人に聞いてみた。本のイメージがあるので探してみましょう。と言って、探し始めた。が、やはり見つからなかった。

 古書店の主人というのは本が本当に好きなようだ、その店主は次に、近くにある古書店に電話して在庫があるかを確認してくれた。僕がこの「幻想・・」をよほど手に入れたいのだ思ってくれたのだろう、その動きを嬉しく眺めていた。電話の先は近くのうららという、沖縄一小さな本屋というので有名な店。そこなら知ってるから直接行ってみますといって、うららに向かった。

 うららは以前から気になっていた店だった。ついてもすぐには事情を明かさず店内を見回した。といっても棚が四つくらい、本好きな人間が、家の古い蔵書の書棚をそのまま持ってきたような古本屋だ。探しても見当たらないので店主に聞くことにした。するとすかさず、いまジュンク堂から、お探しの本があったと連絡がありました、という。すぐジュンク堂へ戻った、先ほどの店主が大事に取り置きされ、えらく恐縮されていた。

 この二店の店主どちらも、この一冊を求める僕に丁寧な感謝を述べていた。この一冊にかける思いがどちらにも伝わったのだろうか、なんだかとても幸せな気分になった。

 こういう、心の触れ合える商売に出会えるというのは、最近、滅多にない。その後、この二冊を大切に読んだのはいうまでもない。「国際・・・」と合わせて、この三冊によって、自分の足元、那覇に寄せる思いが一段と強くなった。

 この二冊には、不思議な縁がある。「なはわらべ・・・」の船越氏は、以前、ある異業種交流会で一緒になり、いろいろ勉強させていただいた。「幻想・・・」の牧港氏は、同級生の父である。本にも出てくるご自宅に伺ったことがあり懐かしく思った。

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