中山孝一

2016年8月10日3 分

酔顔

1997年から始めたお客様のポラロイド写真が壁と天井を埋め尽くす。4千枚にはなろうか、張り切れないものもたくさんある。当初酔った顔を撮ったことから酔顔と書き“すいがん”と読んだ、ある日お客さんがこの文字を“よいかお?”と聞いた。成程どの顔を見ても確かに“良い顔”だ、それから「すいがん」は「よいかお」になった。しかしポラロイドの会社がなくなりフイルムも手に入らなくなったことから現在はスマホでの撮影後アルバムに収めている。

一枚一枚見ているとそれぞれのストーリーが思い浮かぶ、ハッピーなものもあればもちろんそうでないものまで、不幸なところでは前日まで店で愉快に楽しく飲んで騒いで翌日仙台に帰ったAさん、仙台空港からの帰途交通事故で死去の報、又初の沖縄旅行できたカップル、それは楽しい旅だった、彼女からの電話、彼が突然死、楽しかった小桜での思い出の一枚がどうしても欲しい、と、すぐさま送る。また夫の不倫写真のとなりに座った本妻、「これなに、」と、夫の言い訳に僕も同調して繕おうとしたが妻はお見通し、「結構です。主人はこういうひとですから」と、うれしいところでは、サプライズのお膳立てでカップルが結婚までいき、更にその後子供を交えての家族写真、そういう小桜の子供たちの写真も増えてきた。また毎年12月の決まった日に来たおじいちゃんとその孫たちの写真はおじいちゃんが100歳近くなるまで続き、その後はおじいちゃんの写真を前にして飲むことになった。

1997年の3月まだ沖映通りにダイエーがあった頃たまたまカメラの特売をしていた。ポラロイドカメラが意外と安く確か5~6千円台だったような、そこで迷わず購入、まさかフイルムが10枚で2000円もかかるとは露知らずに・・・その後は買ってしまった手前何がなんでも(価値)のある買い物だった物にとしないわけにはいかない、そこで考えた。“1997年のお客様の顔”というテーマで一人ずつ丁寧に撮り始めた。更に一枚一枚ラミネートをして柱に手作りの額をつけての展示に少々満足していた。そしてそれは1997年限りと思っていた。それがいつの頃から二人三人、後は十数名でもオッケイということになり現在に至る。

問題のその(価値)について、一枚200円だから4000枚で80万円になる。これはでかい、と思うでしょう。しかしこの数十倍もの(価値)を生み出したのです。それは一枚の写真から輪ができ、お客様の数が激増したのです、それはお客様がお客様を作り出す仕組みがいつのまにか出来上がっていたのです。あのたった5~6千円のポラロイドから

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